インタビューC「有限会社桃源」関係者
施設外就労の取り組みを受入されている農業生産法人 株式会社 桃源の生産部 岸富美子様に、企業の立場から今回の取り組みについて考えたことや、思いについて伺いました。
御社と、ぽんぽん船様がモデル事業を行うことになったきっかけを教えてください。
私は病院の精神科に勤めておりまして、退職をした後に社会に役立つ仕事をしたいが、自分には何かでるのかということをずっと思っておりました。お年寄りが、地域で生き生きと働かれる仕事に携わりたいと強く思っていたときに、たまたま、「桃源でトマト作りやってみないか」という話しをいただきました。そういった経緯で、桃源で働くことになりました。
実際にトマト作りをしていく中で、廃棄しているトマトがあるので、その廃棄しているトマトを湖陵町の障害者共同作業所みずうみという事業所と連携をして何かできないかというふうに、ずっと思っておりました。そんな想いがを桃源の代表取締役の石川と相談をしておりました。
ですから、今までの経緯と障がい者自立支援事業所ぽんぽん船と想いが一致して、この話が実現しました。私自身も、障がい者の方の社会復帰ということについては、関心をもっていましたので、本当に良い出会いがあったと思っております。
実際に、ぽんぽん船様と事業をする前に、どんな不安がありましたか。
今回の仕事は農作業ですから、事業所で活動をされている利用者さんは、部屋の中で作業をされていることが多いと思います。当然、農業は外に出ますので、暑い日も寒い日も作業も外で作業を行います。外以外にもハウスの中での作業もありますが、寒かったり、温かったりと温度変化が激しいところで作業していただくので、実際に続くのかなという不安はありました。
それ以外にも、受け入れる立場として、ぽんぽん船の利用者の皆さん通ってこられる上で、嫌な思いをされることがないようにするにはどうしたら良いかということが一番大事だなと思っていました。そうしている間に、このモデル事業の実施が決まり、7月に顔合わせをし、それから1ヶ月半ぐらい間に何回か話し合いをし、実際には9月2日から、ぽんぽん船の利用者さんに来ていただきました。
私自身は、障がいのある方と一緒に仕事をすることについては、あまり不安がありませんでした。やはり、病院の精神科に勤めていたということが大きいと思います。
受入してみての率直な感想をお聞かせください。
そうですね、桃源の大規模出荷をし始めた時でしたので、私自身が仕事でかなり手一杯だったので、ぽんぽん船の利用者さんにこの仕事をしてもらえるという見通しがあまり立たない状態からのスタートでした。ですから、ここでの作業を全て、利用者の皆さんにしてもらいました。時間的な制約もある中で、実際にしてもらえる作業を見つけるために、9月から始めて、翌年の1月ぐらいまで、色々試行錯誤しながら進めていきました。実際に、ぽんぽん船の皆さんに丁度良い作業量を見つけるのに4ヶ月ぐらい掛かりました。
今では、トマトの出荷を中心に糖度を測ったり、シールを貼ったりという作業と、トマトに乳酸菌を与える作業、そして配達する仕事をお願いしております。
実際にここまで、やってこられて、ハッと気づかされたことは何ですか。
当初は継続できるかという想いがあったので、「半月ぐらいまでは、半日の仕事でお願いします」と言っていたのですが、ぽんぽん船の皆さんの方から1日でも良いという言葉が返ってきて、私自身も「桃源に来て、働いて良かった」ということをぽんぽん船の皆さんが感じていることが凄く嬉しかったです。
それと施設外就労を始めた時期が、9月の丁度暑い時期でしたから、1ヶ月が終わったときに、「やってきて良かった」とみんなで安堵したことが印象に残っております。
周囲に気を使いながら、他人をカバーしてくれる利用者さんもいれば、黙々と自分の作業をする人もいたりと三者三様で、色々なタイプの利用者さんがおられました。ですが、それぞれが力を持っているので、繰り返し作業を行うことで、能率も直ぐに上がり、私たちが思っている以上に力を発揮してもらえたと実感しています。以前は、一日を掛けてもできなかった乳酸菌をトマトにあげる作業も、最近は直ぐに終わってしまうので、ビックリしております。能率が上がることで時間的に余裕ができ、今後はトマト以外にブドウの栽培も手伝ってもらっております。
ですから、ぽんぽん船の利用者さんの存在は、桃源には無くてはらなない存在になっております。それもこれも、皆さんが努力をして力を付けてこられたからだと思います。
これから障がい者の受け入れを検討される企業へメッセージをお願いします。
この事業は「農業と福祉を繋げる連携」を目的に行ってきておりましたが、福祉のところは皆さんがやる気がある多くの事業所が手を挙げておられるのですが、それを受け入れる企業の体制が広がっておりません。実際に桃源でも3年を掛けて、ようやくお互いの思惑が一致するような状況なのですから、受け入れを考えておられる企業さんは、結果を急がずに長い目で見守っていただければと思います。
実際に農業の現場は、兼業農家が多く高齢化しているということが実情です。そういった農家の人と福祉事業所の人材をうまくマッチングしていけば、お互いの思惑が一致する継続的な仕組みを作っていけると思います。